波多野内科クリニック 浦安市,入船 内科, 消化器内科, 循環器内科

脂肪肝・NAFLD・NASH

 

1.脂肪肝とは

肝臓に脂肪が過剰にたまり、肝臓全体の3分の1以上脂肪滴が占めるようになった状態を脂肪肝といいます(病理診断では肝細胞の5%以上の脂肪滴を認める場合)。脂肪肝の3大原因は肥満、2型糖尿病、アルコールの多飲ですが、脂肪肝には飲酒が関係するアルコール性脂肪肝と、飲酒の習慣がないのに(1日1合以下)生じる非アルコール性脂肪性肝疾患(non alcoholic fatty liver disiease(NAFLD))があります。アルコール性脂肪肝は、飲酒を続けると肝硬変から肝がんに進行することがあります。非アルコール性脂肪肝は、肝硬変や肝がんに進むことがないと考えられていました。しかし、NAFLDの中には、肝組織に壊死、炎症や線維化を伴わない良性の単純性脂肪肝(simple steatosis)と、放置すると進行して炎症や線維化を伴う非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis(NASH))になる脂肪肝があります。そして、NASH(ナッシュ)は肝硬変や肝がんに進行することがあり、臨床上重視されています。わが国ではNAFLDが1000万人から2000万人前後で、そのうち10から20%がNASHに進行すると考えられています。NASHの発症、および肝硬変や肝がんへの進展には、酸化ストレス、インスリン抵抗性、鉄などが関与していると考えられています。さらにNASHの5から20%が肝硬変へ進み一部が肝がんへ進行します。単純性脂肪肝やNASHは、初期には自覚症状がありませんが、全身倦怠感や易疲労感を訴えることがあります。しかし、ほとんどの場合本人も気がつかないうちに進行しNASH、肝硬変、肝がんに至ることが恐いところです。
 

 
 

2.脂肪肝の病因

NASHの基本的病態は、インスリン抵抗性と酸化ストレスです。インスリン抵抗性とは、血液中の糖の利用を助けるインスリンの働きが悪くなる状態をいいます。高血糖を抑えようとしてインスリンが過剰に分泌されると脂肪が肝臓にたまりやすくなり、脂肪肝が増悪します。酸化ストレスとは、鉄の過剰沈着などにより毒性の強い活性酸素を発生させ、肝臓の炎症を進行させることをいいます。
 

1.食生活

総カロリー、糖質、炭水化物、ソフトドリンク(糖質、果糖)、肉類、脂質(特に飽和脂肪酸、ω-6脂肪酸、コレステロール)の過剰摂取及び、魚類、ω-3脂肪酸、食物繊維など接種不足がNAFLD発症の危険因子と考えられております。果物に含まれる果糖は、摂取すると中性脂肪となって肝臓に蓄積されやすい性質を持っています。そのため果糖の取り過ぎが脂肪肝の原因となることがあります。過剰な栄養は、トリグリセライドへと変換され、脂肪組織に蓄積されます。
 

2.生活習慣病

脂肪肝の背景には「肥満」「糖尿病」「高血圧」「脂質異常」などの生活習慣病があります。肥満になると、インスリンの抵抗性が増します。これらを治療することが脂肪肝の改善につながります。脂肪肝は90%以上にこれらの生活習慣病のいずれかが合併しています。また、内臓脂肪が分泌するTNF-αなどの炎症性サイトカインに酸化ストレス、鉄沈着などが加わりNASHが成立します。
 

3.運動不足

体を動かす習慣のない人は、肝臓にたまった脂肪を消費することができません。そのため肝臓の脂肪が増えていくことになります。

 

3.脂肪肝の診断

NAFLDの診断には、飲酒歴がなく、血液検査にてウィルス性肝炎や自己免疫性肝炎を否定する必要があります。
血液検査において、単純性脂肪肝やNASHでは、AST(GOT)よりALT(GPT)高く、多くはALT200以下ですが、NASHでは炎症を伴うため脂肪肝に比してALT高値例が多く、単純性脂肪肝ではアルコール性脂肪肝と異なりコリンエステラーゼが高値を示すことがあります。
NASHでは、脂肪肝に比しγ-GTP、ALTが高値です。コレステロール、中性脂肪は単純性脂肪肝、NASHともに高値を示します。線維化を伴うNASHでは、ヒアルロン酸が高値を示し、血小板は低下します。またNASH患者の30%-40%に鉄が過剰に蓄積しており、肝臓の貯蔵鉄量を示すフェリチン値が高値を示し、血清コレステロール値が高い傾向にあります。脂肪肝かどうかは、超音波検査を受ければわかりますが、単純性脂肪肝とNASHの確定診断は肝生検によります。
 

4.予後

単純性脂肪肝は予後良好ですが、NASHの一部は5~10年経過後に5~20%が肝硬変に進展し、一部肝がんに進行します。一度や肝硬変や肝がんまで進んでしまうと、たとえ治療を行っても元の状態に戻すことはできません。しかし単純性脂肪肝やNASHの段階であれば、健康な状態に戻すことは可能です。単純性脂肪肝と診断されたら毎年AST、ALTをチェックしてください。血小板の減少、ヒアルロン酸高値が認められれば、NASHに進行している可能性があります。
 

5.治療

肥満と糖尿病などの治療と生活習慣病を改善し、インスリン抵抗性と酸化ストレスを防ぐことが基本です。

1.食事療法

肥満を防ぐために間食、果物(果糖)清涼飲料水などを控え、理想体重(身長m×身長m×22)を維持することが大切です。血糖の急上昇をきたす早食い、大食いは避けるようにしましょう。カキに含まれるタウリンは、胆汁の分泌を増やし、血液中のコレステロールを下げてくれます。また、サバに含まれるEPAやDHAは中性脂肪を下げる効果があり、動脈硬化や心筋梗塞予防する働きがあると言われています。鉄過剰になると、たまった鉄が酸化し、炎症を起こす可能性がありますので、鉄分を取り過ぎないように注意することが必要になります。酸化予防には、ポリフェノール、リコピン、カテキンなどのファイトケミカル(植物由来成分)を含む野菜類を接種することが大切です。
 

2.運動療法

習慣的に運動を行うことにより肝臓にたまっている脂肪をエネルギーとして消費することが出来ます。ウォーキングなどの有酸素運動がお勧めです。また、日常生活においても駅では階段を使う、近場の買い物は車や自転車を使わず徒歩で行くように心がけましょう。運動を日々の生活に取り入れることで無理なく運動量を増やすことが出来ます。それによって肝臓の脂肪を減らす効果があります。肥満傾向の人は1日体重を40グラム減らすことにより1カ月1キログラム減量することができます。特に難しいことではありません。
 

3.薬物療法

肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症等の合併症があれば、これらの治療を行います。
内服薬としては、EPA、EPLなどがあります。インスリン抵抗性を合併するNASHに対しては、ピオグリタゾン(アクトス)の有用性が認められています。高コレステロール血症を有するNAFLD、NASHには、HMG-CoA還元酸素阻害薬(メバロチン、クレストール)が肝機能を改善します。高トリグリセライド血症、脂肪肝にはフィブラート系も有効です。
当院では、超音波検査、血液検査によって脂肪肝を診断し、必要に応じて薬物療法などにより治療を行っております。